Microsoft Inspire 2019:パートナーシップの未来

7月、私はラスベガスで開催されたパートナーと再販業者のためのMicrosoftInspire 2019に参加する機会に恵まれました。今回は、このイベントでの私の体験をできる限り忠実にお伝えしたいと思います。

Microsoftパートナーのネットワークの規模を把握していだたくために、まずはいくつかの数字を見ていきましょう。

Microsoftは現在、30万社のパートナーを抱え、毎月7,000社が新規パートナーとして登録しています。

Microsoftの商業市場は、4,000万人のユーザーと、毎月35万件のリードを生成する12,000個の利用可能なアプリケーションを抱えており、毎月9,000万ドルの収益を生み出しています。

クラウド製品の高密度化とオンプレミスからクラウド製品への顧客の移行によって、投資額1ドル当たりの収益が2016年に5.87ドルであったのに対して、2019年は9.82ドルに増加しました。

今回のInspireでは、MicrosoftTeams、CRMDynamics 365、AzureLighthouseを備えたMicrosoftAzure、AzureMigrateを含むいくつかの重要製品と「AIforGood」プログラムがクローズアップされました。バックアップ、アーカイブ、メールセキュリティツールも、パブリッシャーのブースで利用することができました。

謙虚さ、パートナーシップ、信頼

基調講演-観客20,000人、T-モバイル・アリーナ、ラスベガス

最初の基調講演で、Microsoftは、謙遜さと信頼に基づく主張を展開しました。

冒頭の発表で、チャネル責任者のガブリエラ・シュスターは、Microsoftがパートナーに製品の代金を請求しようとしたことについて、すぐに自らの誤りを認めました。

内部の使用権を廃止するこの決断は、コミュニティからの激しい反発によって取りやめられました。

2019/2020年度のいくつかの主力プロジェクトが紹介されました:

  • オンプレミスSQLサーバのユーザーのクラウドへの移行
  • パートナーの技術的熟練度を高めるためのMicrosoftSecurity。
  • さまざまな製品、中でもMicrosoftOffice 365の自動化製品の体験を高めるためのAIの導入。
  • 音声認識、音声合成、リアルタイム翻訳機能を通したAzureAIの多用。

Windows OSからサービスとしてのAIへ

この基調講演の中で特に目を引いたのは、オンデマンドサービスへのMicrosoftの転換でした。

実際のところ、今回初めて、Azureの収益が2019年のWindows部門の収益を上回りました。

Microsoftは、もはや市場のソロプレイヤーではありません。つまり、Microsoftは、サードパーティ製品に簡単に統合できる付加価値の高いソフトウェアコンポネントを開発しなければならないということです。

証拠が必要ですか?オープン・マニュファクチュアリング・プラットフォームの作成の一環として、すべてのBMWの新作モデル車にはAzureAIが搭載されます。さらにその使用範囲が広がって、BMWのすべてのインダストリアルIoTツールはAzureにホストされることになります。

新しいDevOpsツールの発表(Azureへの移行に役立つツール、AzurにKubernetesが登場)に関して、AWSのの影はそれほど薄いとは言えませんでした。Microsoftは、このギャップを埋めるには少々出遅れました。

2019年5月、AWSは、クラウド市場においてMicrosoftAzureとGoogleCloudを上回り、依然首位に立っていました。

データは無限です

同社は、AureAIを介してデータを収集することによって、人間が利用するためのソフトウェアを用いる機会が著しく増加するだろうことも認識していました。

今後数年のうちに、同社は、データ科学に関する知識が全くないデベロッパーでも簡単に利用できるソフトウェアブリックの開発に力を注いでいくでしょう。

今日のデータ量の90%は、実にここ2年間で作り出されたものです。Microsoftによると、2030年までに900億個のIoTデバイスが連結する見込みです。言うなれば、明日です。

次の挑戦は、ホスティングとデータ処理でしょう。

信頼しろと要求することはできません、信頼は毎日の努力によって獲得していくものです。

GDPR(EU一般データ保護規則)の適用、CambridgeAnalyticaのスキャンダル、毎日報告される多くのデータ漏洩問題などによって、MicrosoftAzureのようなプラットフォームの信頼レベルは劇的に落ち込みました。

それゆえに、ITの意思決定者の間で企業の信頼指標を改善することが不可欠です。

同時に、Microsoftのパートナーの中には、エンドユーザーからこのレベルの信頼を維持するための高い技術力や知識のない会社が多くあります。

それゆえに、MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラは、次の公式の「TechIntensity(テクノロジーの強さ)」の概念を提示しました。

TechIntensity = (Tech Adoption(テクノロジーの採用)*Tech capability(テクノロジーを活かす能力))信頼

  • 能力:顧客と再販業者は製品のテクノロジーを活かす能力、特にAI関連の能力を理解しなければならない。
  • 採用:新しい技術を導入する際は専門家に実行させる。
  • 信頼:Microsoftクラウドのデータのインテグリティを信頼する。
  • TechIntensity(技術的な強み):顧客のデジタル転換に強い影響を与えられるだけの高いレベルの知識を持ち、顧客の声に耳を傾ける。

この意識は、イベントの最後に同社が明言した「プライバシーは基本的な人権である」という言葉に実に率直に示されていました。

Office 365:成長中の市場

中小企業の数は7,600万社と推定されており、中小企業市場には800億ドルの価値があるとされています。ところが、Microsoftによると、これらの企業のうちOffice365を利用しているのは、わずか10パーセントに過ぎません。

Microsoftに関して、SharePointがおよそ十年前に経験した大規模導入をOffice365は経験するかもしれません。

サイバーセキュリティ:次第に複雑化する環境での運用方法とは?

このテーマは優先トピックスとして取り上げられたわけではありませんでしたが、サイバーセキュリティは同社の基調講演の至る所に存在していました。Microsoftによると:

  • データ漏洩の平均的な損失額は400万ドル。
  • 毎月、50億件の固有の脅威がインターネットに拡散。
  • 2017年は、マルウェアの40パーセントがランサムウェアであった。
  • すべてのデータ漏洩の30パーセントは、ヒューマンエラー、あるいは、不十分なデータ・ハイジーン(衛生管理)によって引き起こされている。

これを克服するために、Microsoftは自社のサイバーセキュリティ製品の研究開発に10億ドルを投資することを発表しました。

[関連項目]マルチフェーズ攻撃:ハッカーたちによるフィッシングとスピアフィッシングを使ったOffice365のユーザーを狙う手口

取り組むべき多くの脅威

Microsoftは、自社の製品ラインに、以下の脅威に取り組むソリューションを提供することを発表しました。

  • インフラストラクチャ:クラウドアクセス管理、IoT製品のセキュリティ、データセンターセキュリティ、エンドポイントセキュリティ、ハイブリッドクラウドセキュリティ。
  • アイデンティティ:アイデンティティとアクセスの管理および詐欺の防止。
  • ペリメータ:メールセキュリティおよび脅威の検知と管理。

しかしながら、Redmond社は、複雑な問題に取り組むためのツールを開発しても、そのツールを活用したり、問題に取り組んだりするための高い技術力が再販業者に欠けていることに気づいています。

この問題を解決するために、Microsoftはセキュリティワークショップを実施します。

このワークショップによって以下のことが可能になります:

  1. 顧客が達成すべき、戦略・運用・インフラストラクチャに基づくITの目的を明確にする。
  2. 会社のセキュリティに役立ったり、妨げになったりする要因に耳を傾けることによって影響を与える。
  3. 複数年計画におけるセキュリティの優先順位を明確にする。
  4. 次のステップを決める:責任者の明確化と目標達成時期の設定。

個人レベルで、この戦略は非常に建設的なものだと思いました。サイバーセキュリティへの意識が高ければ高いほど、ビジネスに影響を与える脅威の数はより少なくなります。しかしながら、この戦略は、最終顧客のサイバーセキュリティのニーズに関する詳細な専門知識というよりは、標準的なITコンサルティングの手法のように思われます。例えば、Microsoftは、戦略の「範囲外」として、情報システムにおける脅威の調査などの高度な分析をリストアップしました。

MicrosoftInspireでは、セキュリティ製品の責任者であるプロダクトマネージャーと対面する機会もありました。私は、彼らのうちの一人と話をする機会を得て、MicrosoftThreat Detectionやコンプライアンス管理ツールなどのツールについて知ることができました。

それぞれの製品に関して、私は15分間の短いデモを視聴し、5分間の質疑応答ができました。

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Microsoftの脅威検知

MicrosoftThreatDetectionは、様々な環境における検出ルールを設定するためのダッシュボードのようなツールです。それ配備するだけで、ユーザーはダッシュボードのインターフェースにシグナルを受信できるようになり、それらの信号に基づいて決断を下すことができるようになります。この製品は、TorネットワークIPとして検知されたIPによるサービスへのアクセスからメール内のマルウェアの検知まで広範囲を網羅します。

このツールは非常に効果的だと思われます。問題は、この製品は製品のセットアップ時は、いかなるルールの提供も環境に応じた検知もできないということです。デフォルト設定はいくつか備わっていますが、それらは非常に基本的なものです。

つまり、技術的スキルが限られている企業は、Microsoft ThreatDetectionのような製品をフル活用できないことを意味しています。

したがって、利用する側のスキルを向上させるか、サイバーセキュリティのコンサルティング会社を雇ってその仕事をさせるかのどちらかが必要になります。

Microsoft Identity Access Management(IDとアクセス管理)

MicrosoftIdentity AccessManagementは、企業のアクセスのセキュリティを保証するツールです。このツールを使用することで、例えば、未知のIPやいつもと違うロケーションから送信されたファイルの開封を検知したり、単に機密情報ファイルを社外に送信するのを防いだりすることができます。

この製品は、うまく作られており、ユーザーのアクションを基本としています。例えば、MicrosoftWordでは、ボタンを押すと、読み込まれるファイルの危険度が明示されます。このようにして、MicrosoftIdentity Access Managementは、ファイルが寿命を迎えるまでの間中ずっとそれを自動的に追跡します。

しかし、この製品には限界があります。追跡されるのは、問題になっているファイルだけです。つまり、プラットフォームは、この同じファイルがすでに情報システム内で複製されているかどうかを調べることはありません。

結論

基調講演やワークショップから、Microsoftの出席者、大勢の参加パートナーに至るまで、MicrosoftInspireはMicrosoftパートナーのコミュニティの活力となっています。

Microsoftは、サイバーセキュリティ問題に取り組むために、セールスチーム、パートナー、最終顧客をトレーニングすることが必要不可欠だと認識しています。

彼らのセキュリティ製品が完全なものに見えても、知識の足りない大衆には理解するのが難しいことが分かりました。そのため、多くの機能がユーザー中心となっています。自分に必要な機能を有効にしているのが自分だということを意識すべきなのはユーザーです。

Office365の市場に関しては、新規ユーザー数の著しい増加が見込まれます。

MicrosoftInspireは、国別のネットワーク形成の機会でもあります。私はフランスのエコシステムの重要人物に話を聞く機会に恵まれました。

Dynamic365の市場に関わっている影響力のある人々の多くは、Microsoft365の市場、特にOffice365に真剣に注目し始めています。

この記事からWindowsIinspireの概要を把握していただけたら幸いです。

また来年お会いしましょう!